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1.脳外科医が失明を含む重複障害を負って

2006年1月13日掲載

私は今から9年半前の平成8年2月、現役の脳神経外科専門医の一人として大学病院の脳神経外科医局が主催したスノーボード体験旅行で北海道のニセコスキー場に出かけました。県内のスキー場に比較的近い群馬県前橋市で大学時代を過ごし、スキーでの滑降には自信を持っていた私は、初めてのスノーボード経験にも少し慣れてきたところでスピードを上げてしまったために緩斜面で大転倒して後頭部を強打し、意識不明の重態に陥るという自損事故を起こしてしまいました。

強い痛み刺激でどうにか体を動かす反応があるだけという瀕死の昏睡状態で発見された私は、同僚の脳外科医たちによる救急蘇生を受けながら北海道の陸上自衛隊のヘリコプターで札幌医大救命センターに運ばれました。札幌医大では直ちに頭蓋内出血の血腫除去や脳圧亢進(のうあつこうしん)を防ぐために頭蓋骨を除去する外減圧術が行われましたが、脳挫傷による浮腫のためにそれだけでは救命不能との判断で、当時確立しつつあった脳低温療法で体温を32℃に下げて管理した結果、辛うじて命を取り留め、1ヶ月後に奇跡的に意識を回復しました。

それでも札幌医大に入院していたころはまだ歩行の早期リハビリで下肢、体幹の運動機能障害と平衡障害による歩行困難を強く自覚していただけで、不思議なことに自身の視覚障害を自覚することはありませんでしたし、記憶障害などのいわゆる高次脳機能障害も自覚はしていませんでした。

しかし、受傷から3ヶ月後に自身の勤務先でもあった横浜市立大学病院に転院したころには、見舞いに来てくれた親しい友人の顔が認識できなかったり、時計の文字が見えないなどの視覚障害に気づき、1年が365日であることも思い出せない高度の記憶喪失を自覚すると、脳外科医としての臨床経験から自分がかなり重度の脳外傷を負っていることや、その結果として背負っているであろう障害は回復が難しく、現役への復職は難しいであろうということまですぐに直感しました。視覚を始めとする五感を認識し、言語の記憶や判断などを担当する大脳を損傷してしまえば、その回復がほぼ不可能であることは言わば医学的な常識だからです。

もちろん、その時担当していた大学病院の受け持ち患者さんや派遣病院の仕事などの責任を果たせなくなることには申しわけない気持ちでいっぱいでしたが、自身の医学的知識から障害を負った事実を最初から客観的に認識することができたのは幸せだったのかもしれないと思っています。

プロフィール

佐藤 正純/さとう まさずみ
中途視覚障害者の復職を考える会(通称、タートルの会)所属
1958年6月10日 神奈川県横浜市生まれ
1984年 群馬大学医学部医学科卒、横浜市立大学病院に研修医として就職
1996年2月 スポーツ事故で重度障害者となって療養生活に入る
1999年12月 同病院退職
2002年4月 横浜市内の専門学校に非常勤講師として勤務
2004年からは重複障害を負った障害者のリハビリ体験について語る講演活動と同時に横浜市内のジャズバンド「NKST(ネクスト)」や杉並区の障害者バンド「ハローミュージック」に所属して、音楽活動を続けながら現在に至る


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