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1.福祉工学への道

2012年10月9日掲載

私は福祉工学という分野を歩き続けて40数年になります。もっとも、最初から福祉工学を標榜していたのではなく、周りの人達に私の専門は福祉工学であると命名されたという方が正しいといえます。

学生時代は電子工学科に所属していましたが、卒業論文を書くために「メディカルエレクトロニクス(ME)部門」という研究室に配属されました。当時のME部門は、電子工学を医学に応用することを目指しており、研究の主流は生命維持を目指した人工臓器でした。とくに呼吸・循環器系が動かなくなった人たちを人工心肺で助ける研究が多くを占めていました。
学生たちは、電子工学の理路整然とした講義を聴いたあと、イヌの胸を切り開き人工心肺を接続し、動物たちが息を引き取るまで待つという日々を過ごしていました。

実験を横目にしながら、MEにとって人を長生きさせるための研究は最も重要な課題であるのは言うまでもないが、生きている間を快適に過ごすのを助けるMEの分野があっても良いのではないかと考えるようになりました。紆余曲折はありましたが、結果的に「高齢者・障がい者のための生きがい」を支援するME、とくに、弱ったり失ったりした「感覚」、「脳」、「運動」を支援する福祉工学と呼ばれる道を歩いていました。

この間に、日本人の価値観は大きく変わり、また、多様化していることをつくづく感じます。一昔前は、「金持ちになること」、「偉くなること」、「長生きすること」を目標としていた人が多かったのに対して、最近は「いかに楽しいか」、「やりがいがあるか」、そして「いかに快適な生活を送るか」ということに価値を置く人たちが明らかに増えています。

日本の超高齢社会に向けて、新しい価値観へのシフトはますます加速されているように思えます。医療でも治せないことから障がいを負ったまま長い期間に渡って老後を送る人たちが増えれば現在問題になっている社会保障費の増加を招くことでしょう。

一方では、社会の高齢化は世界的な傾向であることから、高齢者を支援するビジネスが成長するのではないかと産業界も本気で考えるようになってきています。快適な生活を支援するためのテクノロジーは、当事者だけでなく社会的にも産業界でも期待を寄せるようになってきているといえます。

現在は、福祉工学と呼ばれる道を歩み始めた頃とは隔世の感がありますが、この間に経験したことをできる限り若い人たちに伝えていきたいと思っています。

プロフィール

写真:伊福部先生がデスクに座っている写真

伊福部 達/いふくべ とおる
1971年北海道大学大学院修士課程(電子工学)修了後、1989年北大・電子科学研究所・教授。
2002年東京大学先端科学技術研究センター・教授、北大・名誉教授、 東大・名誉教授。
2011年より東京大学高齢社会総合研究機構・特任研究員。
この間、感覚・コミュニケーション支援のための福祉工学の開拓と産業応用の研究に従事。
電子情報通信学会フェロー、VR学会フェロー(現:会長)、 JST S-イノベ「高齢社会(略称)」総括代表著書に「音声タイプライタの設計」(CQ出版、1983)、「音の福祉工学」(コロナ社、1997)、「福祉工学の挑戦」(中公新書、2004) 「ゴジラ音楽と緊急地震速報」(監修、ヤマハMM2012)など。


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