「ゆうゆうゆう」は、NTTが障がい者の雇用促進を目的に設立した「NTTクラルティ株式会社」によって運営されています。
2011年4月19日掲載
視覚に障害のある人は白杖を使用して障害物を確認しながら歩行しています。しかしそれは、足元の安全確認が中心で高い位置や広範囲の確認は難しいです。
そこで今回は、視覚に障害のある人の行動範囲を広げる画期的な「眼鏡」をご紹介!眼鏡がどのように便利なのか、実際に視覚に障害のあるスタッフが体験しています。眼鏡の魅力をぜひ、ご覧ください。
音で知らせることにより、両耳から聞こえる音の違いによって、対象物の位置を感覚的に把握することができる「聞くメガネ」です。
メガネは超音波を受信するセンサー(メガネの両サイドに設置)、音の大きさなどをコントロールする器具(メガネに接続された小型ラジオ程度の大きさ)、イヤホンの3つからできています。
使用するには、メガネをかけて、器具を胸ポケットなどに入れイヤホンをつけます。眼鏡の両サイドのセンサーから超音波(42kHz)を発信します。対象物からの反射は両サイドのセンサーで受信します。
この超音波で距離を計測して、対象物までの距離を音の高低で知らせます。対象物まで遠ければ低い音(最低0.25kHz)が鳴り、対象物に近ければ高い音(最高20kHz)が出力されます。
目線の高さで3メートル程度先まで確認ができます。
対象物まで遠ければ低い音、近ければ高い音が鳴ります。近づくと音が高くなっていく仕組みです。
実際にメガネを着用して歩行しました。壁に向かって歩いていくとブザーが鳴り出し、その音はだんだん高くなります。
白杖との違いは、壁にあたることなくそれに気づくことができることです。足元だけではなく、目線に近い範囲の物も察知できます。
また、自分の前を人が横切ることを確認できるのも安心です。右から人が歩いてくると右耳から音が聞こえ、左からだと左耳から聞こえました。少し世界が広がった感覚になり、より外出する機会が増えそうです。
平成17年5月に有限会社メディカルアシストを設立しました。
この設立に協力し、共同経営者となってくださった方が、リタイヤした盲導犬のお世話をするボランティアをされていたことから、視覚障害者と関わるようになりました。そこで視覚障害者からニーズを汲み取り、視覚障害者向けの機器開発に挑むようになりました。
「聞くメガネ」を開発しようと思ったのは視覚障害当事者からのアイディアです。コウモリやイルカは超音波で対象物を認識できるので、人間にも音だけで対象物を聞き分けることができるのではないかと考えました。
視覚障害者にとって、聴覚情報のみで対象物を把握できれば、生活が有意義になると思いました。
メガネ製作でデザイン面について苦労しました。視覚障害者の中で外出する機会が多いのは女性ですので、ファッショナブルなデザインにしたいと思っています。
また、高齢者やこどものように顔の小さい方々に似合うメガネのデザインやユニバーサルデザインを考慮するとスイッチ類の形状などが課題ですね。
今後は、コスト面やデザインの面の向上に着手したいと考えています。本当に必要としている視覚障害者の方の手の届く価格にするには、より多くの方々に使用してもらうことにより多くの台数を生産し、製造コストを抑えることです。
超音波の世界を伝えることは、聞くメガネが「健常者にも楽しんでもらえる機器」でなければならないということも意味しています。自然界にあふれる超音波は、虫の鳴き声や樹木のこすれる音、自転車のスポーク回転音や自動車のブレーキ音など、いろいろな場所や状況で発生しています。
聴覚の領域を広げ、超音波の世界を体感することはとても楽しいことだと思います。
視覚障害者の斬新な歩行補助具になると期待して体験取材を行いました。聴覚情報をうまく応用することで、確かに物体認識範囲は広がると感じます。
超音波に対する反応が強いこと、メガネ自体が重いことなどの課題も見受けられましたが、改善されていけば普及・実用化してほしいと思います。