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1.きっかけは1本のカセットテープから

2006年6月16日掲載

いまから26年前のことです。東京都内で気ままな大学生活を送っていた私は、所属していた社会福祉系サークルの先輩たちに連れられて、大学から歩いて20分ほどのところにある盲学校を初めて訪れました。それまで視覚に障害のある人が身近にいなかったため、少し緊張していましたが、盲学校で学ぶ中学生たちと語り合ううちに、すっかりうち解けていきました。

中学生たちは、一人ひとり、大事そうに本を抱えています。その本は、彼らが読みたいと思っている本なのです。しかし、そのままでは読むことができないので、私たち大学生の「お兄さん」「お姉さん」に読みたい本を託し、カセットテープに吹き込んでもらおうというわけです。

私は、井上靖の「射程」という小説を受け取りました。恥ずかしい話ですが、その時、カセットテープの作り方など教わらなかったため、女性のところは声色を使ったり、勝手にBGMを入れたりしました。それを聞いた生徒さんにとっては、かなり気持ちの悪いテープだったのではないかと、その後、大いに反省したものですが、このときのつたない経験が、現在の私の仕事につながっているのも確かです。

私が通っていたG大学には、当時、まったく視覚障害の学生がいなかったのですが、テープ朗読を通して盲学生との交流を重ねたことが功を奏してか、G大学を「点字受験したい」という生徒があらわれました。盲学校から相談を受けた私たちは、教授会をまわったり、その生徒が合格した後のサポート体制を約束するため(誰も点字を知らなかったにもかかわらず)、にわか点訳サークルを結成したりしました。

残念ながら、その時の教授会の結論は「受け入れる自信が無い」ということで、点字受験は認められませんでした。(何年か後に点字受験が認められるようになり、何人もの盲学生が合格しています)
せっかく点訳サークルを結成したのに、点字を使う学生が入ってこないことになり、なんだか間抜けな感じでしたが、その盲学生は、無事、横浜の公立大学に合格し、なんと私たち点訳サークルのために、定期的に点字を教えに来てくれることになったのです。

その後、彼に誘われて、関東地区の大学で学ぶ視覚障害学生の交流会や、視覚障害者読書権保障協議会といった集まりに顔を出すようになり、そこでたくさんの視覚障害のある人と知り合うことになりました。
その中の1人が市橋正晴さんという弱視の公務員の方で、その後、市橋さんが1996年8月8日に「大活字」という名前の、日本で初めての弱視者向け大活字本出版社を高田馬場でスタートされたとき、声をかけてもらいました。当時、私は目白台にある出版社(偶然にも、私が初めて訪れた盲学校も目白台にありました)で編集者をしていたので、夜になると、目白台から高田馬場まで歩いていって、ボランティアでDTP編集を手伝うようになりました。

ところが、翌年、市橋さんは事故で帰らぬ人となってしまいました。まだ50歳という若さでした。市橋さんのご家族は、市橋さんの遺志を継ぎ、大活字社を継続させたいという意向でしたので、私もずいぶん迷った末、当時勤務していた出版社を退職し、大活字社で編集部長として働くことになりました。
それまでは、あくまで「ボランティア」という意識だったものが、いつのまにか「仕事」として、視覚障害者の読書の問題にかかわることになったのです。

プロフィール

写真:成松さん

成松 一郎/なりまつ いちろう
有限会社読書工房代表
NPO法人「バリアフリー資料リソースセンター」事務局長
1961年 神奈川県横須賀市生まれ
「読書のユニバーサルデザイン」の実現をライフワークとするため、2004年「読書工房」という出版社を設立
また、2005年からは、出版・デザイン・図書館関係の仲間たちとはじめた「出版UD研究会」を主宰

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