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言葉を失っても気持ちは伝えたい 1/4

2006年12月19日掲載

ご自身の失語症体験をもとに当事者の視点を大切にしながら、言語聴覚士としてご活躍中の平澤 哲哉さんにお話を伺いました。

「言葉」に障害のある方への訓練方法

聞き手:

言語聴覚士としてご活躍とお伺いしました。どういったお仕事をされているのでしょうか。

平澤:

原因はさまざまですが、言語に障害のある方がいらっしゃいます。そういった方への言語訓練が主な活動です。言語に障害を持つと、コミュニケーションにも問題が起こる場合が多いんですね。そこで、日常生活が営んでいけるよう、訪問活動を中心に支援しています。

聞き手:

平澤さんは、どのような方の訓練をされているのですか?

平澤:

私が専門で診ているのは、脳梗塞(こうそく)、脳内出血、くも膜下出血など、脳血管障害の方や交通事故・転落事故での頭部外傷による失語症の方が対象です。また、ろれつが回らなくなる運動性構音障害の方、ストレスや声帯の異変によって声が出なくなってしまう失声症のような方ですとか、全般的に精神活動が低下されている認知症によるコミュニケーション障害の方もいます。

聞き手:

訓練内容を教えてください。

平澤:

病院ではカードなどを使用した机上での練習が主になります。患者さんの前にその絵カードを何枚か並べ、「猫はどれですか?」「赤い果物はどれですか?」と質問して指差してもらったり、文字を提示して正しい絵を指してもらいます。また、絵カードを1枚ずつ示しては、「これは何ですか?」と名称を答えてもらったり、文字で書いてもらったりします。それぞれの訓練は患者さんによって皆違うのですが、機能を改善していくのに大切な訓練となります。ただ、私が訪問で行なうときには、この机上の訓練はほとんどしません。各家庭には多くの 「生きた教材」 があります。部屋にある絵や賞状、家具や陶器、庭にある植木や池の鯉などが話題の基になります。カードを見せて「これは何ですか?」というような退屈な訓練をする必要がありません。身の回りの教材を使って生きたコミュニケーションができるわけです。

「失語症」の苦しみを知って

聞き手:

平澤さんが言語聴覚士になろう、と思われたきっかけはありますか?

平澤:

大学3年生のときに、交通事故によって失語症になったのがきっかけです。この失語症というのは、脳の言語中枢器官にダメージを受けたことが原因で、日常使用している「聞く」「話す」「読む」「書く」という言葉に関する4大機能のすべてに障害を受けます。つまり、日常生活がうまくいかなくなるんですね。私も、誰にも自分の気持ちを分かってもらえないというジレンマと 孤独を感じてた時期があったんです。

聞き手:

平澤さんが感じた「孤独」。例えばどのようなときに感じていたのですか?

平澤:

何度練習しても地名が覚えられずに、窓口で切符一枚買うことができない。大学に復学しても、講義についていけない。そのような言葉を理解できない悔しさやもどかしさもありました。でも、失語症の本当の苦しさは、そういうことではないんです。失語症の人は、自分の症状を隠したがることがあります。言葉をうまくしゃべることができないと、何だか知的にも低下していると思われがちです。何とかうまくその場を切り抜けようとしてきたのですが、それが大きなストレスでした。友人たちと喫茶店に入っても、メニューが分からなかったり、飲みたいものがあって質問をしたくても、名前が出てこなくて結局、「みんなと同じもの」を頼んでしまう。「平澤はどう思う?」と意見を聞かれても、本当は嬉しくて意見もあるのに、どう伝えていいのかがわからずに、「俺もそう思う」と逃げてしまったことなど・・・。そういうことを繰り返しているうちに、自分はいてもいなくても同じなのではないか、誰にも自分を分かってもらえないんだ、という孤独を感じるようになっていたのです。そんな悩みを唯一ぶつけられたのが、言語聴覚士だったんですよね。


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