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2005年7月26日掲載
内科の医師にして、自立支援のため視覚に障害のある人のためのリハビリテーションを推進し、多方面で活躍されている、山田幸男さんにお話を伺いました。
聞き手:
山田先生は内科の医師とお聞きしていますが、どうして視覚に障害のある方の支援をされるようになったのですか?
山田:
私は糖尿病専門の医師ですが、視覚に障害のある人によくお会いします。 実は、糖尿病の合併症で視覚障害になってしまう人が一番多いのです。 病気が進行して眼が見えなくなって眼科を離れても、糖尿病の治療は続けなければいけないので、内科の医師として、視覚に障害のある人を診察することがよくあります。
もう20年前でしょうか、ある患者さんが目が見えなくなってしまったことを苦にされて、病院の屋上から飛び降りてしまったことがありました。 このことにショックを受けてどうしたらいいのかを考え、目が見えなくなった人のためのリハビリテーションを探し始めたのがきっかけです。
脳卒中の人のリハビリテーションというのは見ていたので、視覚に障害のある人にもリハビリテーションが必要だろうと思ったのですが、その当時、私自身を含めて多くの医師の間では、視覚に障害のある人のためのリハビリテーションというもの自体知られていなかったのです。
患者さんが亡くなられてから、視覚に障害のある人のためのリハビリテーションのことを2、3年考えていました。 ちょうどそのころ、糖尿病学会である先生の講演を聴いて、初めて視覚に障害のある人のためのリハビリテーションがあることを知ったのです。 それから、資料を集めるために日本各地の施設を回りました。
聞き手:
視覚に障害のある人のためのリハビリテーションは、あまり盛んに取り組まれていなかったのでしょうか?
山田:
そうですね。取り組みはあったのだと思います。 ただ、日本には今まで、視覚に障害のある人のためのリハビリテーションに関する本はほとんどありませんでした。 でも、リハビリテーションについて、断片的に情報を集めることはできたので、一冊の本にまとめてみたらどうかと考えたわけです。 そして、本は眼科の先生、内科の糖尿病を診察されている先生、透析療法をしておられる先生などの医療関係者、それも特に眼科の先生に見てもらえる本にしたいと思っていました。 視覚に障害のある人は、そういった先生のところにたくさんおられると思ったからです。 だから、その先生方がいざとなったら読めるような本を作らなければいけないのだと感じていました。 私もそういう本があれば、もっとリハビリテーションを早く始めていたでしょうし、眼科の先生だってやり方を教えてくださったかもしれないですよね。
聞き手:
リハビリテーションの啓発のために本を書かれ、その後、リハビリテーション外来を始められたのですね。その経緯を教えてください。
山田:
視覚に障害のある人が自立できるようにしたい。これはリハビリテーションの基本ですよね。 自立できるようになるためには何が必要かということを考えたのです。 まず、1993年12月に新潟市の信楽園病院を母体に「新潟県の中途視覚障害者のリハビリテーションを推進する会」が設立されました。 会では、必要なことから先にやっていこうということで、視覚に障害のある人にアンケート調査の協力をお願いしました。 その結果、「施設には入らないで、自分のいる家から通ってリハビリをやってほしい」、「もとになる病気の治療をしているときにリハビリテーションをやってほしい」という意見がものすごく多かったのです。 「それなら、ここでリハビリテーションをすればいいじゃないか」と思って1994年5月からリハビリテーション外来を信楽園病院で開設しました。
当時、私たちはまだ力不足の部分も多くありましたので、リハビリテーション外来で充分なケアができない場合には、施設などで補ってもらえればいいと考えていました。 とはいっても、できるだけ施設に入るのではなく、家から近いところで支援できたらと考えていたのです。